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      【京論壇2017】リカと、SNS、グローバル化

      この文章は2017年7月29日よりhttp://jingforum2017.hatenadiary.jpで公開しました。

       小学生のとき、重松清さんの小説をよく読んでいた。背の低い本棚には『きよしこ』『ナイフ』『口笛吹いて』といった背表紙がならび、僕はそれを一、二冊持って二段ベッドの上にあがるのだった。

      その中の一つに、ある女の子の話があった。タイトルもその子の名前も忘れてしまったが、ここではリカと呼んでおこう(たしかそんな名前だった気もする)。リカが他のクラスメイトと違うのは、友達と口論になったとき、相手の意見をあっけらかんと認めてしまうところだった。相手が熱くなり、さあケンカだというところで、「あ、それもそうだね。」と、素直に同意する。ニコッと笑うリカに、喧嘩腰になりかけていた友達もふと我に帰るのだった。
      この本を読んだときから、なんとなく僕はリカになろうとしてきた。「あ、それもそうだね。」と言えることがなんだかとてもかっこいいような気がして、相手の正しいところはすぐに認めようとしてきた。そうして、よく言えば柔軟な、悪く言えば自分のない人間ができあがった。
      さて、その頃から10年以上経った。悲しいかな、僕は文庫本をスマートフォンに持ち替え、ページを左右にめくる代わりにツイッターのタイムラインを上下に引っ張っている。
      ツイッターには、リツイートという機能がある。他の人のツイートをシェアして拡散させる機能だ。猫の動画をリツイートする人がいれば、真面目な政権批判の投稿をリツイートする人もいる。日本人ってこんなとこがダメだよね、というリツイートもあれば、中国人ってほんと最低、みたいなリツイートもある。

      ふと気になって、リツイートしている人の他のツイートを見てみる。往々にして、リツイートしたものと同じような投稿が並んでいる。中国人への批判をリツイートしているような人が、でも中国人ってこういうところがすごいよね!みたいなツイートは、まずない。

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       SNSの発達が、グローバルな結束を強めたということはよく言われている。まず間違いなく、アラブの春が最初の例としてあげられる。そうした文章のいくつかは、その後の政治混乱についても触れて、いいことばかりでもないよね、というような論考を加えている。

      グローバル化やテクノロジーの発達は、確かにある集団の連帯を強くしたかもしれない。ただ、その集団が他の集団と対立しているとすれば、その二つの集団全体においては亀裂が深まったという見方もできる。その亀裂は、ある時はSNS上で、ある時は現実において争いを生む。
      今日のSNSを見ていると、この「集団単位での結束」ばかりが強化されているのではないか、という気がしてくる。同意見のツイートをリツイートして、それをまた同意見の人が拡散する。一方、反対意見は、やはり反対意見を持つ人同士でシェアされている。自分と違う意見を見つけて、「あ、それもそうだね。」とリツイートする人はあまりいない。
      日本人はディベートが苦手、というのもよく聞く話だ。アメリカ人などに比べ、日本人には意見と人格を同一視する傾向があり、自分の考えを離れてどちらかの立場に立ってみる、ということがどうも馴染まないらしい。それが正しいとすれば、反対意見を意に介さない人たちの存在も理解できる。
      もちろん、僕のような考え方がいつも正しいとは思わない。相手の意見をひたすら批判的に考えることも重要な営みだろう。議論において、あるいは暴力を使って対立することでさえ、結論を出すためには必要なことなのかもしれない。例によって、僕はどちらに加担すべきか、決めきれていない。僕の中のリカは、考えあぐねている。

      経済学部4年 浦野湧

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