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      【京論壇2016】「よくわからなさ」と向き合う~ 一人っ子政策に関する議論~

      この文章は2016年11月1日よりhttp://jingforum2016.hatenablog.comで公開しました。

       こんにちは、人口発展分科会メンバーの齋藤勇希です。

       10/8の京論壇最終報告会をもって、約5ヶ月の人口発展分科会の活動が終了しました。

       今回は、東京セッションで行った「人口政策」についての議論を紹介しつつ、個人的な成長について語れたらと思います。

       ところで、「人口政策」とは何でしょうか?

       広義には、人口の移動に影響を与える政策(移民政策、中国の“戸口[hukou]”(戸籍制度)など)、人口の質に影響を与える政策(健康を増進させ、寿命を延ばすなど)も含むことがあります。

       しかし「人口と発展分科会」である以上、日中の学生で議論するにあたってやはり避けては通れない話題として「出産をコントロールする政策」、特に所謂「一人っ子政策」があります。

       (正確には、農村や少数民族に関しては二人っ子以上認められていたため、「一人っ子政策」というのは語弊があると北京大側が強調していました)

       ご存知の方も多いかもしれませんが、2015年から中国は急速な高齢化社会に対応するため「一人っ子政策」から「二人っ子政策」に移行し、今では二人まで罰金なしに産むことができます。ただ、中国国民にとってもはや「一人っ子」が当たり前となってしまい、二人目を産もうと思わなくなっているという現状があるのは興味深いです。

       北京大学の学生としては、「既に過去のものとなった一人っ子政策について議論をしてどうするのだ」という想いだったかもしれませんが、それでも日中両学生の等身大の価値観を探るため、あえて「1978年に導入された一人っ子政策」について、それを許容できるかどうかというテーマで議論しました。

       というのは、東大側は中国で「一人っ子政策」を実行するために強制中絶や強制不妊手術が行われ、女性の産む権利や身体、胎児の生命が侵害されていた事実を知っていたからです。

      東大側の予想としては、中国のSNSで強制中絶のショッキングな画像が投稿され注目されたこともあり、中国で最もリベラルな場所の一つである北京大学の学生は、明白な人権侵害を伴う「一人っ子政策」のような産児制限にはさすがに反対するだろうと考えていましたが、この予想は見事に外れ、分科会の全ての中国人北京大生がこの政策を支持しました(シンガポール人の北京大生は不支持)。

       たかだか10人のメンバーではサンプルが少なすぎるかもしれませんが、それでも全ての中国人学生が支持側に回ったのは興味深いです。

       京論壇はwhy?を繰り返していく議論を特色としているので、ここでもwhy?を繰り返して相手の主張を深掘っていったところ、面白い発見がありました。

       中国人学生が紹介した「集合的人権(collective human rights)」という概念です。これは、「集団全体の利益」といった意味に近いそうで、なるほど政策実行の手段は確かに女性の身体や赤子の命を侵害しており問題ではあるが、「一人っ子政策」のおかげで中国の人口爆発とそれに伴う飢餓・貧困が止められたのだから、その意味で「中国全体として」人権は守られたということのようです。

       

       政策の目的(と効果)により「手段は正当化される」("The end justifies the means. ”)という主張もありました。

       彼らにとってはやはり「まず国家あっての人権」という意識であり、国益と人権というものがより強固に結びついているのです。

       北京セッション中にかなり雄弁に政府批判を繰り返していた北京大生にとっても、やはりこの政策について議論していると「政府≒個人」という意識になる。

       これは面白い発見でした。

       このことは、日本の現在の少子化対策について議論した時にも如実に現れます。

       東大の学生としては、「アベノミクス新三本の矢」という経済成長達成手段の一つとして「希望出生率1.8%」が掲げられていること、あるいは、政府が十分なサポートを提供することなしに「子どもを産んだ方がよい」というプレッシャーばかりかけてくることが気に食わないという主張でしたが、北京大生としては「何が問題なのか?」という様子でした。

       東大側としては、GDP増大のための少子化対策というのは個人の自由な私的決定に不当に干渉しており、正当性が感じられないと考えていましたが、北京大生にとって、国家の経済発展が個々の国民にいわばトリクル・ダウンするということは当然で、「出生率増加によるGDP600兆円の達成=日本国民一人一人の利益」ではないかという意識だったのです。北京大生の「集団的人権」という概念がここにも顔を出し、大きな価値観の違いを認識しました。

       勘違いしないでいただきたいのは、「北京大生に人権意識がない」というわけではないということです。彼らも、「人権は西洋の概念(western concept)だと感じる」とは言っていたものの、もちろん生命や身体の侵害、「産む権利」の侵害を問題視していないわけではありません。

      「一人っ子政策」の場合も、あくまで差し迫った飢餓・貧困の連鎖を断ち切るためのものであり、”The end justifies the means”.というわけです。

       なるほどと思いました。

       日本人としても、「公共の福祉」により個々人の自由が制限されるということ自体には賛成なので、どこまで許容するかという程度問題なのかもしれません。

       「人口政策」の議論では、そんなことを学びました。

       正直に言うと、個人的には「韓国や台湾、香港の学生と比べて中国本土の学生ってよく彼らだけで固まってしまうし、言っていることもなんかちょっとよくわからない…」という印象を持っていました。

       しかし、人口政策に限らず、今回日中の学生だけで二週間インテンシブに議論する中で、少なくとも彼らの言っていることは「筋は通っている」と思うようになり、それは大きな収穫だったと思います。

       我々はあくまで東京大学や北京大学の比較的リベラルな層の声しか代表していないのかもしれません。

       自分は四月から日本の公的機関で働くこととなりますが、残念ながら京論壇に参加した北京大生の中に中国政府で働くことを目指す学生は見当たりませんでした。

       京論壇の参加者のようなある程度リベラルな価値観を持ち合わせた中国指導者ばかりではないのかもしれません。京論壇での話し合いはしたがって、将来中国のカウンターパートと話し合うときにそのまま役に立つわけではない可能性もあります。

       しかしそれでも、リベラルで西洋寄りの価値観と中国的な価値観を併せ持った北京大生が、ある種日本と中国の橋渡しのような役割を果たしてくれたおかげで、自分が京論壇参加前に抱いていた「中国本土の学生ってなんかよくわからない」という想いはかなり払しょくされました。

       中国という国に関しては、「一人っ子政策」を離れても、南シナ海・東シナ海の問題、抗日教育をはじめ、日本人にとって「なんかよくわからない」ことがいくつかあります。

       しかし、その「よくわからない」という感情をむき出しにするよりも、一つずつじっくり議論してたとえ共感できなくともお互いを理解しようとしていくこと、その上で対話すること、それが結局はこの大きな隣国とうまく付き合っていく鍵なのではないかと思いますし、その姿勢を二週間かけてじっくり学べることが京論壇に参加する意義ではないかと自分は思います。

       就職活動でセッション前の準備が十分にできていなかった上に時々よくわからないことを言い出す、そんな自分を優しく受け止めてくれた人口発展分科会のみんな、そして京論壇を支えてくれた運営メンバーや協賛企業の皆様、関係者の皆様、この貴重な機会を与えてくださり誠にありがとうございました。

       細々と東アジアの学生会議に関わり続けてきた自分の大学生活を締めくくる大変有意義な日々になったなと感じています。

       この経験を活かしつつ、日中関係が少しでも誤解と不信から解放されるよう、自分にできることをコツコツとやっていこうと思います。

      東京大学国際関係論コース4年

      齋藤勇希

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